さようなら、ギャングたち
わたしが詩を読む時、
―高橋源一郎,さようなら、ギャングたち
感じる感じ方は「おや、すてきだぞ」か「あれ、ひどいな」の二通りしかない。
他には、
ない。
これは今からかれこれ40年以上も昔々の1981年、
第4回群像新人長編小説賞優秀作に選ばれた高橋源一郎デビュー作からの1フレーズ。
タイトルは『さようなら、ギャングたち』で、
その後に出版された『虹の彼方に』と『ジョン・レノン対火星人』の3作を基にした映画もある。
それこそボクの大好きな映画、
1986年に公開された山川直人監督商業映画(35mm)デビュー作の『ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け』だ。
前作はこれまたボクが大好きな村上春樹作品『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』が原作、
『100%の女の子』という13分間の短編映画。
それで『ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け』、
中島みゆきソング・ブック(室井滋)のセリフではこうなる。
「俺、
―ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け
詩って苦手なんだよな」
「あたしもよ、
詩を読んだ時に感じることっていうのは二通りしかないのね。
おや、
すてきだぞと、
あれ、
ひどいなの二通りよ」
「ん~、
わけがわからんていうのはないのか?」
「私はそういう風には考えないことにしているの」
ボクも詩に限らず絵でも本でも音楽でも見たり読んだり聴いたりする時に感じる感じ方は、
二通りしかない。
おや、
すてきだぞ。
あれ、
ひどいな。
その二通りで、
他にはない。
「わからない」という『ものさし』
ん~、
わけがわからんていうのはないのか?はビリー・ザ・キッド(三上博史)のセリフ。
確かに、
なんだかよくわかんな~いという人たちだってもちろんいる。
どんなものさしで捉えるのか?
は人それぞれだし勝手だとは思う。
でもボクの勝手なものさしで言わせてもらうと、
そもそもそういう対象ってわかる・わからないの対象なのかな?となる。
頭で考えてわかるわからないと言っているのではなくて、
ただそのまま感じてみれば良いのにと思う。
例えば、
何処かの美術館に行ったとする。
ずらりと展示された作品たち、
それらをひとつずつ丁寧に見ていく。
そうすると、
感じるのは「おや、すてきだぞ」か「あれ、ひどいな」ということだ。
そして「おや、すてきだぞ」の作品は、
もう1度戻って今度は更にじっくりと見ることになる。
場合によっては更にもう1度、
更にもう1度と何度も行ったり来たりということになる。
この場合の「おや、すてきだぞ」の作品は、
有名・無名とか評価が高い・低いとかはあまり関係ない。
自分に合うか合わないか?
だけだ。
もちろん、
いろいろと知識がある方がより楽しめるかもしれない。
例えばそこに何かしら巧妙に隠された作者の意図があれば、
知らないよりは知っている方がやはり楽しいだろう。
でもその意図が何であれ、
最後に残るのは「おや、すてきだぞ」か「あれ、ひどいな」の二通りしかない。
他には、
ない。
だから『わかる・わからないのものさし』を持ち出して、
何だか全然わからないね~止まりで終わってしまうとちょっともったいない気がするのだ。
わからないならわからないで済ませればいいのにね
そういうものさしでものごとを眺めるのは、
もちろんその人の勝手だと思う。
その「よくわからない」を自分の中に収めている分には、
何の問題はない。
ただ困っちゃうのは、
感じないことを棚に上げてわからないと批判したり馬鹿にしたりすることだ。
まあわからないというのは、
一種の恐怖なのかもしれない。
わからないことが、
批判されたり馬鹿にされたりすることになるかもしれないからだ。
そうならないように、
批判したり馬鹿にしたりするのだから始末に負えない。
わからないことはわからないで良いし、
感じないんなら感じないでも良いのにね。
意味不明の自己防衛本能が、
誰かを傷付けてしまうのはやはりいただけない。
そもそもわからない対象は、
批判したりばかにしたりなんてしないんだから。
ただ、
わからないことを批判したり馬鹿にしたりする人がいるのも確かだ。
こちらもやはり、
始末に負えない。
そう言っているボクも、
始末に負えないんだろうけど。
できることならば…
できることならば、
ボクはただただ「おや、すてきだぞ」と感じられるモノ・コト・ヒトに囲まれていたいと思う。
屁理屈の理屈なんて、
全くもって必要ない。
それってなかなか難しいかもしれないけれど、
そうありたいと思う。
少なくとも、
自己防衛本能に翻弄されて大事なことを見失わないようにしたい。
ZELDA
さて、
曲は『ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け』の中で流れていた曲。
映画の中でも本人たち役で出演していた、
ZELDAの曲を3曲。
今聴いても、
良いものはいつになってもやはり良いのだ。
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