エヴリン・マクヘイル

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The Most Beautiful Suicide

The Most Beautiful Suicide、
相反する単語が並ぶ。

最も美しい、
自殺。

そう呼ばれたのは、
エヴリン・マクヘイルだ。

Evelyn Francis McHale
September 20, 1923 – May 1, 1947

1947年5月1日、
彼女はエンパイア・ステート・ビルディング86階展望デッキから駐車中の国連のリムジンに落下する。

そして彼女の死から4分後、
ロバート・ワイルズはその姿をカメラに収める。

その写真はLIFE1947年5月12日号に掲載され、
The Most Beautiful Suicideと呼ばれることになる。

手袋をはめた左手で真珠のネックレスを握りしめ、
脚は交差し右手は優雅に湾曲している。

まるでそれは、
ただ眠っているかのようだ。

ただリムジンの屋根はぐしゃぐしゃだし、
割れたガラスが散らばっている。

The Most Beautiful Suicide同様に、
相反する景色が1つに収められている。

Inspiration

その後この写真は、
さまざまなアーティストにインスピレーションを与えることになる。

もちろん、
本人はそんなことを望んでなんかいなかったにしてもだ。

アンディ・ウォーホルはこの写真をモチーフとして、
Suicide (Fallen Body)という作品を残している。

カート・コバーンが日記で9番目に好きな曲として選んだPaganiconsをリリースした、
サッカリン・トラスト1984年のアルバムSurviving You,Alwaysのカバー・アートにも使われている。

マシーンズ・オブ・ラヴィング・グレイス1995年のアルバム、
Giltにもモノクロの写真に色が施されて使われている。

パール・ジャム2009年のアルバム、
Backspacerでもイラスト化されて使われている。

デヴィッド・ボウイ1993年のシングル、
Jump They SayのPVではボウイがエヴリンのように破壊された車の上で手足を広げている。

ある意味、
彼女の死は世界中にばら撒かれている。

Suicide note

展望台にはきちんと畳まれた彼女のコートと、
家族の写真が詰まったメイク道具と黒い手帳が残されていた。

I don’t want anyone in or out of my family to see any part of me.
Could you destroy my body by cremation?
I beg of you and my family –
don’t have any service for me or remembrance for me.
My fiance asked me to marry him in June.
I don’t think I would make a good wife for anybody.
He is much better off without me.
Tell my father,
I have too many of my mother’s tendencies.

― Evelyn Francis McHale Suicide note

私は家族の内外の誰にも私の一部を見られたくありません
私を火葬して処分してもらえますか?
あなたと私の家族にお願いです
私の家族にお願いです――葬儀や追悼式は一切しないでください
フィアンセは6月に結婚しようと言ってくれました
私は誰が相手でも良い妻にはなれないと思います
彼は私といないほうがずっとマシなはずです
父に伝えてください
私は母に似すぎています

ここに書かれた内容は、
当然ながらどういうことなのか?はわからない。

誰かを救うことはできるんだろうか?

ナゼ?は誰にもわからないし、
本人ですらわかってなかったのかもしれない。

そもそも、
それぞれが抱えているものなんてわかるはずがない。

わかってあげようとか、
解決してあげようとか救ってあげようなんて思わない方が良い。

それで済んじゃう場合もあるかもしれないけど、
そんなんじゃあ済まないことだってたくさんあるのだ。

そんなことを試みるくらいなら、
何か違う景色を一緒に見ようとする方が余程マシかもしれない。

誰かを幸せになんかできないように(瞬間的な幸せは感じてもらえるかもしれないけど)、
誰かを救うことなんて直接はできないのだ。

でもまあ、
そう試みようとすることはまだマシだ。

きっと、
そこには愛があるはずだから。

問題なのはあれこれ想像して、
何も考えずに勝手にいろいろ述べたりすることだ。

そこにあるのは、
意味不明の行き場のないまき散らされた悪意でしかない。

それはもう、
単なる悪趣味以外の何物でもない。

彼女はこの写真を見ることは叶わない

いずれにしても、
彼女はこの写真を見ることは叶わないままだ。

きっと見たくもないだろうし、
見られたくもないだろう。

こうやって知らない地で知らない誰かに、
何十年も経って扱われることだって嫌に違いない。

それでも、
不謹慎ではあるが確かにこの写真は単純にある意味美しい。

彼女の遺体は妹のヘレン・ブレナーによって身元が確認され、
希望に従って火葬された。

もちろん彼女のお墓は、
ない。

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