村上春樹『1973年のピンボール』始まりの音楽 – 『ピンボールの魔術師』

2作目の長編小説

『1973年のピンボール』は『羊をめぐる冒険』の前作で、
『風の歌を聴け』に続く村上春樹の2作目の長編小説だ。

だから、
この頃村上春樹は未だ専業作家ではない。

ピーター・キャットの店主、
でもあったのだ。

この物語(と言って良いのなら)は、
1973年9月に始まって11月に終わる『秋の物語』だ。

1章から25章まであって、
『僕』の物語と『鼠』の物語が平行して進んでいく。

元々のタイトルは『一九七三年のピンボール』だったが、
それが『1973年のピンボール』に替わっている。

まあ『一九七三年』が『1973年』に変わっているだけだから、
前作の『風の歌を聴け』の時とは随分違う。

この作品は、
文芸誌『群像』1980年3月号に掲載されてその後単行本化された。

表紙の絵は、
ここでも佐々木マキ氏。

前年の『風の歌を聴け』に続いて第83回芥川賞(1980年上半期)の候補作にもなったけれど、
受賞はしていない。

そもそもこの時の結果は、
残念ながら『受賞作なし』だった。

芥川賞選考委員のコメントが面白い

その時の選考委員たちのコメント、
こちらも今読むとやはりかなり面白い。

新しい文学の分野を拓こうという意図の見える唯一の作品で、部分的にはうまいところもあれば、新鮮なものも感じさせられるが、しかし、総体的に見て、感性がから廻りしているところが多く、書けているとは言えない。

文藝春秋-1980年9月号-井上靖

前作につなげて、カート・ヴォネガットの直接の、またスコット・フィッツジェラルドの間接の、影響・模倣が見られる。しかし他から受けたものをこれだけ自分の道具として使いこなせるということは、それはもう明らかな才能というほかにないであろう。

文藝春秋-1980年9月号-大江健三郎

筋のない小説で、夢のようなものだ。主人公は英語とフランス語の飜訳事務所を開いているとあるが、生活は何も書いてない。

文藝春秋-1980年9月号-瀧井幸作

ひとりでハイカラぶってふざけてゐる青年を、彼と同じやうに、いい気で安易な筆づかひで描いても、彼の内面の挙止は一向に伝達されません。現代のアメリカ化した風俗も、たしかに描くに足る題材かも知れない。しかしそれを風俗しか見えぬ浅薄な眼で揃へてゐては、文学は生れ得ない、才能はある人らしいが惜しいことだと思ひます。

文藝春秋-1980年9月号-中村光夫

古風な誠実主義をからかひながら自分の青春の実感である喪失感や虚無感を示さうとしたものでせう。ずいぶん上手になつたと感心しましたが、大事な仕掛けであるピンボールがどうもうまくきいてゐない。双子の娘たちのあつかひ方にしても、もう一工夫してもらひたいと思いました。

文藝春秋-1980年9月号-丸谷才一

この時代に生きる二十四歳の青年の感性と知性がよく指かれていた。主人公は双生児の女の子二人と同棲しているのだが、この双子の存在感をわざと稀薄にして描いているところなど、長い枚数を退屈せずに読んだ。

文藝春秋-1980年9月号-吉行淳之介


今この人たちがもう1度読んで評したら、
いったいどうなるんだろう?

評価なんてものは一定ではなくて、
時間と共に変化するものだからね。

いずれにしても、
この作品ボクは嫌いじゃあない。

The Who – Pinball Wizard

実際にはこの曲が本の中で流れているわけではないけれど、
まあ始まりの音楽ということで。

『1973年のピンボール』で流れる音楽たちはこちら!

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