『貧乏な叔母さんの話』に出てくる『砂糖を入れ過ぎたコーヒーのような甘ったるいポップソング』

砂糖とコーヒー

『貧乏な叔母さんの話』に出てくる音楽

誰かが芝生の上に置いたラジオから、 砂糖を入れ過ぎたコーヒーのような甘ったるいポップソングが風に乗って微かに聞こえていた。 失われた愛だとか、失われそうな愛だとかについての歌だ。 太陽の光が僕の両腕に静かに吸い込まれていく。

―村上春樹-貧乏な叔母さんの話-1

短編集『中国行きのスロウ・ボート』の2作目に出てくるのが、
何とも不思議な作品である『貧乏な叔母さんの話』。

まあ内容は取り敢えず置いておいて、
ここに出てくるのは『砂糖を入れすぎたコーヒーのような甘ったるいポップソング』だ。

そして、
その歌詞は『失われた、もしくは失われそうな愛だとかについての歌』である。

これだけだと具体的には何という曲がながれていたのか?
はちょっとわからない。

でもここは曲名やアーティスト名が出てくるより、
こういった表現の方が相応しいのかもしれない。

具体的過ぎると、
その曲にとってはあまり楽しい話じゃあないからね。

砂糖を入れ過ぎたコーヒーのように甘ったるい曲、
と言われて嬉しいはずもない。

それにその曲が好きな人にとってみれば、
少しばかり不愉快になるかもしれないからね。

『甘ったるい』は全く違うイメージになることもある

ところで、
甘ったるいポップソングも場合によっては随分と違った印象になることもある。

例えば、
日本では1987年に公開されたデビッド・リンチ監督の『Blue Velvet』。

あの世界で流れる、
ロイ・オービソンの『In Dreams』などはまさしくそれだ。

カイル・マクラクラン演じるジェフリーが、
デニス・ホッパー演じるフランクたちに拉致されて行った店『THIS IS IT』のシーン。

その帰り道、
車の中でジェフリーが思わずフランクを殴ってしまってからの一連のシーン。

この2つのシーンと、
この曲はもうセットでしか考えられない。

ロイ・オービソンの甘い歌声は、
もうただの甘ったるいポップ・ソングではなくなる。

不吉で暴力的なイメージと、
デニス・ホッパーのあのぶっ飛んだ演技しかもう浮かんでこなくなる。

この曲が好きで、
まだこの映画を見ていない方は正直見ない方が賢明かもしれない。

でも、
それはせっかくの素晴らしい映画を見るチャンスを失うことでもある。

どちらを選ぶのか?
は難しいところだ。

ただ、
この映画は嫌いな人も多いだろうからな。

まあ、
なんとも言えない。

このように曲のイメージが大きく変化してしまうことは頻繁に起こるわけでもないが、
全く起こらないことだとも言えない。

例えば、
TV番組『世にも奇妙な物語』でもう随分と昔に放送された玉置浩二主演の『ハイ・ヌーン』。

そこではデイヴ・ブルーベック・カルテット、
1958年の誰もが知っている『Take Five』が流れる。

これも一度見たら曲は映像とセットとなり、
二度と元のイメージで聴くことはできなくなるに違いない。

以前はYouTubeで見ることができていたのに、
最近どうやら消されてしまったみたいだ。

これは、
かなり残念なことである。

いずれにしても、
この2曲は曲自体とは何の関係もない映像によってイメージを大きく変えられてしまったという話だ。

今のところ、
この2曲を上回るイメージ崩壊は経験していない。

Roy Orbison – In Dreams

そういうわけで、
ロイ・オービソン1963年の『In Dreams』。

この1963年という年に、
ロイ・オービソンはビートルズと共にジョイント・コンサートをイギリスで行っている。

実は知っている方はもちろん知っているだろうけど、
ビートルズの『Please Please Me』はこのロイ・オービソンの曲からインスパイアされたんだよね。

まあそれについては、
また別の機会に。

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中国行きのスロウ・ボート
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