村上春樹の短編集『中国行きのスロウ・ボート』で流れる音楽たちの始まり

中国行きのスロウ・ボート

昨年の今日をまた繰り返す

実に不思議なのだが、
昨年の今日2/3(昨年は今年と違って2/3が節分で2/4が立春だった)はボクが別の場所でこれと同じ内容のものを開設した日だった。

もうそこには文章は残っていないんだけれど、
ちょうど1年経ってまた同じことを繰り返そうとしているのだ。

同じ頃ではなくて同じ日というのは偶然にしては出来過ぎな感じだが、
無意識のうちにそういうことをしていたことに少し驚いている。

たまたま同じ日に同じスイッチが入る仕掛けみたいなものが、
知らない間にボクの中に埋め込まれたのかもしれない。

スタートは『中国行きのスロウ・ボート』

この場所は、
今のところは村上春樹氏の本の中で流れている音楽を紹介していこうという場所だ。

タイトルが明確なものもあればアーティスト名だけの時もあるし、
もっと曖昧な表現のものもある。

それらをなるべく零れ落とさないようにしていこう、
と思っている。

それでスタートの対象は昨年と同じ、
村上春樹1983年の処女短編集『中国行きのスロウ・ボート』。

ボクが持っているのは、
3年後に出た文庫本の方。

本棚に収まったまま滅多に取り出されることがない、
『村上春樹全作品 1979-1989 3 短編集Ⅰ』でも読むことができる。

もちろん好きなのは安西水丸のステキなイラストの表紙の方だけど、
担当編集者は『これのどこがいいの?』と首をひねっていたらしい。

人のセンスってやつはさまざまなんだろうけど、
よくもまあそれで編集者なんてやっていたなと思う。

それでこの短編集の7つの物語は、
全集収録にあたって改めて色々と手を入れられたものが多い。

タイトル作品でもある『中国行きのスロウ・ボート』も、
中盤以降は随分と違っている。

『なるべくオリジナルの雰囲気を変えないように細部の交通整理をしたつもりだけど、
色合いが少しは変化したかもしれない』、
とは作者の言葉。

タイトルはソニー・ロリンズの演奏で有名なスタンダード・ナンバー、
『オン・ナ・スロウ・ボート・トゥ・チャイナ』から取ったそうだ。

タイトルを先に決めてから書いたもので、
このタイトル先行型のスタイルは他の作品でも見られる。

この演奏と曲が大好きだからこのタイトルにしただけで、
それ以上に深い意味はどうやらないらしい。

On A Slow Boat To China

中国行きの貨物船(スロウ・ボート)に
なんとかあなたを
乗せたいな、
船を貸し切り、二人きり……
—古い唄

―村上春樹-中国行きのスロウ・ボート-epigraph

さて、
『中国行きのスロウ・ボート』のエピグラフにはこの曲の歌詞が引用されている。

作詞(作曲も)は、
あのフランク・レッサー。

アカデミー歌曲賞に5回ノミネートされ、
1949年の映画『水着の女王(Neptune’s Daughter)』の『Baby, It’s Cold Outside』では受賞もしている人。

このタイトルの『A Slow Boat to China』は、
もともと『とても時間が掛かる』と言う意味で使われる。

ポーカーでは『I’d love to get you on a slow boat to China,I’d get rich.』、
『あんたを中国行きのスロウ・ボートに乗せたならがっぽり稼げるんだけどな』という感じで使われていたようだ。

それをそのまま引用して、
歌詞に持ってきたんだろうね。

I’d like to get you on a slow boat to China.

―Frank Loesser -A Slow Boat to China

『キミを中国行きのスロウ・ボートに乗せたなら時間をかけてゆっくりとモノにするよ』、
という感じかな…。

実はもう少し深い意味がありそうだけれど、
まあそれはいい。

Sonny Rollins-On A Slow Boat To China

さて、
この物語のタイトルのキッカケになったというソニー・ロリンズの演奏には当然ながら歌はない。

レコーディングは1951年だから、
まだ彼が21、2歳くらいの時のパフォーマンスのはずだ。

なのにケニー・ドリューのピアノにパーシー・ヒースのベース、
そしてアート・ブレーキ―のドラムをバックにした躍動感溢れる豪快なプレイは既に完成されている素晴らしい演奏になっている。

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