村上春樹音楽-風の歌を聴け-グレン・ミラー-ムーンライト・セレナーデ

ムーンライト・セレナーデ

ムーンライト・セレナーデは流れない

だから僕にとっては、グレン・ミラーの残した一ダースばかりのヒット・ソングは、遥か昔の古典というよりは、むしろアクチュアルに『懐かしい』曲になっている。『風の歌を聴け』という最初の小説を書いたとき、もしこの本を映画にするなら、タイトルバックに流れる音楽は『ムーンライト・セレナーデ』がいいだろうなとふと思ったことを覚えている。

和田 誠/村上春樹-ポートレイト・イン・ジャズ

そしてこの本は大森一樹監督によって映画化されたけれど、
この『Moonlight Serenade』が流れることはなかった。

でも、
タイトル・バックにこの曲が流れたとしたらそれは決して悪くないはずだ。

ボクにとってこの曲は『アクチュアルに懐かしい』曲ではないけど、
それでも聴いていると何だかとても気分が良くなる。

芥川賞選考委員のコメントが面白い

この物語は第81回芥川賞(1979年上半期)に挙がったけれど、
結局は受賞できなかった。

その時の、
選考委員たちのコメントがやたら面白いので載せておく。

村上氏の作品は憎いほど計算した小説である。しかし、この小説は反小説の小説と言うべきであろう。そして氏が小説のなかからすべての意味をとり去る現在流行の手法がうまければうまいほど私には「本当にそんなに簡単に意味をとっていいのか」という気持ちにならざるをえなかった。こう書けば村上氏は私の言わんとすることを、わかってくださるであろう、とに角、次作を拝見しなければ私は氏の本当の力が分かりかねるのである。

文藝春秋-1979年9月号-遠藤周作

今日のアメリカ小説をたくみに模倣した作品もあったが、それが作者をかれ独自の創造に向けて訓練する、そのような方向付けにないのが、作者自身にも読み手にも無益な試みのように感じられた。

文藝春秋-1979年9月号-大江健三郎

村上春樹氏の『風の歌を聴け』は、二百枚余りの長いものだが、外国の翻訳小説の読み過ぎで書いたような、ハイカラなバタくさい作だが……。このような架空の作りものは、作品の結晶度が高くなければ駄目だが、これはところどころ薄くて、吉野紙の漉きムラのようなうすく透いてみえるところがあった。しかし、異色のある作家のようで、わたしは長い目で見たいと思った。

文藝春秋-1979年9月号-瀧井幸作

村上春樹さんの『風の歌を聴け』は、アメリカ小説の影響を受けながら自分の個性を示さうとしています。もしもこれが単なる模倣なら、文章の流れ方がこんなふうに淀みのない調子ではゆかないでせう。それに、作品の柄がわりあい大きいやうに思ふ。

文藝春秋-1979年9月号-丸谷才一

表紙のお話

ところでこの村上春樹処女作の単行本の表紙は、
佐々木マキ氏が描いたものだ。

彼が描いているのは、
たまたまではない。

村上春樹氏は10代の頃に彼の漫画を『ガロ』で愛読していて、
それで表紙のイラストを熱望したらしい。

倉庫街の外れの防波堤に左手に火の着いた煙草を持って佇む白いTシャツの青年、
ブルーの海には空き瓶がプカリと浮かんでいる。

8・2・6と番号が振られた倉庫とその先の山と夜景、
黄色い光を放つ灯台。

オレンジとイエローの間のような色の空に、
ピンクの土星だろうか?

そして1番上には、
『Happy Birthday and White Christmas』。

この『Happy Birthday and White Christmas』は、
元々群像新人文学賞応募時のタイトルだ。

そして鼠から毎年僕の誕生日12/24に届く小説、
その原稿用紙の一枚目に書かれているフレーズでもある。

『風の歌を聴け』というタイトルはトルーマン・カポーティの短編小説、
『Shut a Final Door』の最後の一行『Think of nothing things, think of wind』からとられた。

でも英語に翻訳されたこの小説は、
『Hear the Wind Sing』となる。

ところで、
倉庫の番号は8月26日のことだろう。

『ノルウェイの森』で直子が自殺してしまった日、
それと同じだ。

そしてそれは同時に、
この物語の終わりの日でもある。

1970/8/8~8/26の18日間のことが書かれていることは、
最初にハッキリと出てくる。

ただこの物語に出てくる『僕』が三番目に付き合っていた女の子は、
春休みの4月に自殺したことになっている。

その女の子は、
次回作『1973年のピンボール』では直子という名前が与えられている。

まあいい。

ピンクの土星はどうだろう?
デレク・ハートフィールドの『火星の井戸』なら出てくるけど土星は確か出てこない。

この作品の次の『1973年のピンボール』で僕が話した相手に、
土星生まれが一人いたけどまだそのお話はこの頃は出来ていない。

Glenn Miller-Moonlight Serenade

『風の歌を聴け』で流れる音楽たちはこちら!

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